千葉工大デザイン科学科では、今年度から3年生の研究室配属の時期が早まり、夏休み前に仮配属されることになりました。せっかくなので「補講」的に、勉強会を開催することにしました。
本当は全員出席してほしかったけど、まぁ夏休みだし、強制もできないので、有志参加形式の開催です。わざわざ参加する学生たちが得をするように、サービスしているつもりです。
私がデザインを学んだ80年代と現在では、グラフィックデザイン分野の環境や道具も大きく変化しています。かつては、最終アウトプットである印刷物の完成までのプロセスの中に、様々な創造の可能性が含まれていました。企画やレイアウト指定という設計段階だけでなく、写植や版下制作、製版段階にも、手を加える余地が残っていて、そんな手間をかけた作品が世に出る度に、「すんげ〜」「やられた〜」と、多くの刺激を受けたものです。しかし現在は、表現のほとんどが個人のパソコンの中で完結します。アプリケーションソフトを使いこなすことが「デザイン」だと誤解している学生(に限らず)は少なくないと思います。
本質が失われ、形式の保持が目的にすり替わっていくのは人の世の常ですが、大学でのデザイン教育に携わる者としては、後輩たちに、デザインの本質についての「知」と「技」を手に入れて社会に出て行ってほしいと願っているわけです。
今日は「文字のデザイン」をテーマに挙げてみました。日常無意識に使っている様々な書体にはそれぞれデザイナーがいて、彼らが目的を持って文字をデザインしていることを知ってもらい、その文字の持つポテンシャルを引き出すための文字組を考えながら文字を組む。そんな心構えを鍛えたい・・・と思ってのプログラムです。
文字をじっくり眺める


活字にはボディという文字が描かれるスペースが設定されていること、文字が元々ペンや筆の運びでできるかたちを受け継いでデザインされていること、文字にも骨格がありそれに肉としての太さが加わっているということ、似たような書体でもディテールの違いによって全体としての印象が変わること、などを伝えてもう一度スケッチに挑戦。

造形要素としての文字
こんどはちょっと視点を変えて、文字のかたちを削っていってどこまでその文字を識別できるか、という表現に挑戦してもらいました。

文字組で遊ぶ
さて今日の最後は、文字をパズルのピースのように見立てて、組み合わせたかたちによって意味を強調する表現の実験。これも手描きでやりたかったけど、時間の都合やそれぞれのスキルの差も考慮してIllustratorを使いました。


さて、参加者に響くものはあったかな?