2016年11月29日火曜日

拡張現実ピタゴラ装置(その3)前半ギミックの制作

まずは基本的なビー玉の動きを考えてみる

絵コンテをもとに、具体的な装置の形状を考えていく。授業の最初に伝えたように、この授業では表現しながら考えることが重要だ。
「宇宙からの物体X」のテーマを実現するために、まずは導入部分の表現を検討した。「物体X」が宇宙を旅し、惑星を一つひとつ破壊しながらとある惑星に迫ってくる、というストーリを実現すべく下図のような動線を考えた。楕円軌道を描きながら中心に向かって迫ってくるイメージだが、時間短縮のため軌道は直線で。ただし、「ぐるっと回ってくるイメージ」を実現するため、ビー玉の経路はクロスするようなモデルを描いてみた。

そして早速試作。まずはビー玉のスピードを制御すればよいかを確認するため、プレーンにレールだけを組んでみた。レールはプラ段を二つ折りにしただけ。柱も同様、プラ段を二つ折りにしてガムテープで留めて作った三角柱。


ビー玉がゆっくり転がっていき、コーナーで飛び出してしまわないような角度・・・を探りながら、組み立ててみた(上図・・・写真を撮り忘れたので、スケッチで)。
さて、この時点で最初の課題が発覚!この柱の構造は強度がなく、しばらく時間が経つとレールを支えきれず、潰れてしまう(泣)。なんらかの補強方法を考えなければ・・・。ということで、高さ調整も兼ねて、下図のような方法で固定した。

「ピタゴラ」らしいギミックを

次は、惑星を破壊していく仕組みだ。惑星のイラストが爆発しているイラストに差し代わる、アニメーション的なギミックを色々妄想した。

最終的には、シーソーを作って、ビー玉が当たる力で壁を押し倒して、爆発のイラストが立ち上がる、というギミックで勝負することにした。
加工は、ギミックを挿入する場所でレールを切り離し、ギミックを挟み込むという方法をとった。
最終的には下図のような処理で決着をつけた。

待機中に「パタッ!」となってしまわないように、小さく切った両面テープで固定している。ビー玉が当たった衝撃でパタン!といくように調整するのがかなり難しかった。

画面からビー玉が飛び出した後のオチの部分は、この時点ではまだ詳細を考えていなかったが、スペースを確保するため、上部と同じ方法でレールだけは組んで、こんな形にまとまった。

さて、ビー玉を転がしてみよう。


イメージ通りのスピードでビー玉が転がり、惑星を破壊していく表現がかたちになった。
しか〜し!実はここからが重要。
安定してビー玉が最後までたどり着くための微調整が必要だ。



ある程度テストして行けそうと思ったところからビデオ撮影を始めた。しかし、どうしても途中で止まったり、コースアウトしたり・・・、を繰り返す。結局77テイク目の撮影にして、やっと全体が動くようになった。
これはまずい。最終発表会では一発勝負。発表会までの時間で装置自体のへたりも出てくるはず。レール全体の補強と安定性の確保は課題として、心に留めておこう。

2016年11月22日火曜日

拡張現実ピタゴラ装置(その2)企画

「情報表現基礎1」の授業では、オリエンテーション→材料(プラダン、土台用のスタイロフォーム)、機材(Arduinoセット)の配布→実制作・・・と進む。実制作の最初のステップは、アイデアを視覚化すること=絵コンテを描くことだ。

まずは絵コンテを描いてみる

表現に入る前のアイデアスケッチも、「プロトタイピング」のひとつと言ってよい。頭の中のモヤモヤを、描いてみることで整理できる、というだけでなく、「よっしゃ、やるで!」と気持ちに勢いをつける効果もあると思う。
映像表現における絵コンテは、作品の設計図としてのイメージが強い。しかし、時間軸を含む表現における発想の初期段階で、表現の時間的展開を構想するためのフレームワークとして、絵コンテのフォーマットはとても便利だ。
授業では、CM制作現場での絵コンテ、宮崎駿・出崎統・湖川友謙の絵コンテ、そしてアニメーション技法の研究にも熱心なディスニーの本を紹介している。


動きのスケッチ

「もの」のデザインは、物の形を考えることでもある。この課題も、モノとしての装置を考えようとすれば、どうしても現実のモノのかたちを追いかけることからスタートすることになる。毎年、「工場」や「家」「スポーツのコート」など、場所あるいは場面から入る作品も多い。
しかし今回の作品表現は、構造物としての装置のカタチよりも、ビー玉の動きに込める物語の方が重要だ。このような発想の視点を伝えることも結構難しい。授業では、「まず玉の軌跡を適当に描いて、それに形をつけてごらん」とか「一筆書きで適当な線を描いて、その軌跡を描くための装置をイメージしてごらん」などと説明しているが、なかなか・・・。

そして絵コンテ

そもそも今回、「自分も作ろう」というスイッチが入ったのは、学生に向けての絵コンテの描き方を、実際に描いて見せながら説明したことがきっかけだった。
説明した以上、実際に形になるところまで、一気通貫でやって見せなきゃね。もともとホラーやスプラッタ系は好きではないのだが、口から出まかせで「物体X」といってしまったので、これをやり切ることにした。

「絵コンテ発表会」用クオリティで描き直したのがこちら。
さて、いよいよ実制作スタートである。

2016年11月15日火曜日

拡張現実ピタゴラ装置(その1)準備

動機

「拡張現実ピタゴラ装置」は、公立はこだて未来大学の1年次後期必修科目「情報表現基礎1」の課題テーマである。1年生全員が6つのクラスに分かれて、8週間という短時間で取り組む課題となっている。
授業情報→拡張現実ピタゴラ装置
私は2012年から3年間、教員の一人として関わった。






その後この授業の担当を外れたが、2016年度はピンチヒッターとしてひとつのクラスを担当することとなった。

以前から思っていた事だが、デザイン系の授業は「やってみてわかる」が基本なのだから、教員も学生と同じ課題をやってもいいよね、ということで・・・今年度は、私自身もやってみた。

オリエンテーション

課題の詳細は先出の授業サイトに譲るとして、この授業の特徴のひとつは6クラスをそれぞれ別の教員が担当することにある。私の担当するクラスではふたつ、クラス独自の制約をいつも設けている。

1.提供された材料だけでやりきる
自分で自由に材料を調達して表現して良い、というクラスもあるが、私としては「制約こそ創造の泉」ということで、徹底的にプラダン(プラスティックダンボール)と向き合ってもらうことにしている。しかし、学生は逃げる。プラダンと戦わず、カラーガムテープでの造形で切り抜けようとするのだ・・・残念。

2.具象表現の禁止
既存のキャラクターはもとより、お手軽な人や物、風景、出来事などをそのまま絵で表現するのは禁じ手としている。具象表現は描くのに時間が掛かるし、「うまい/へた」で評価されがちだ。したがって、我がクラスでは、表現物は立体も映像も、原則として抽象図形のみを利用する、という制約を設けている。あ・・・もちろん、これについても、堂々と打ち破って「お花」や「人形」などを堂々とつくってる学生は、いる。

抽象表現のヒントとして、いつも見せているのは、「アニマシー知覚」に関するこのムービーだ。

これはHeiderとSimmel(1944)の実験に使われた映像(実物かどうかはちょっと解らないけど)で、鑑賞者がこれらの幾何図形の動きから生物らしさを感じる、という結果を得た。この知見は様々なキャラクター・アニメや機械の動作、そして現代のインタフェース・デザインにも応用されている。
今回の課題でも、このアニマシー知覚を積極的に利用した表現を目指す。

プロトタイピング

もうひとつ、この授業で大切にしているのは、「やってみてわかる」というプロセスだ。「プロトタイピング」はことばの通り「試作」ということだが、デザインプロジェクトにおける試作とは、重要な評価の方法だ。理屈でわかっていても、実際にやってみるとうまくいかない、と言うのは世の常だ。(図面で考えて実物を作ってしまう、建築の世界には敬意を評してる)テレビの「ピタコラ・スイッチ」でも、とてつもない試行錯誤が行われている。ちなみにこちらのムービーは、撮影時の苦労を映像化したもの。


授業では、プロトタイピングの参考資料としてこのムービーも紹介している。


もはやワークショップの定番ともいえる「マシュマロ・チャレンジ」は、大学の学びと通じるところが多いと思う。

さて、いよいよ制作に入るよ。